任天堂 “驚き”を生む方程式

DS・Wiiの成功体験、その裏でどういう思考・試行がなされたか。
モノを作る中でどいういったことを考えて進んでいったかという物語は、読んでいて楽しく、刺激になる。

why→what→how

本自体で記載されていたわけではないけれど、Wiiができるまでの経過は、「検討→キーコンセプト設定→具体化」というサイクルになっているように見えた。

  • 議論
    • 「何で人はゲーム機に触らないのかな、何で人は逃げちゃうのかな」
    • 「本当に据え置き型っているのか→Wiiはテレビにチャンネルを増やすような機械にしたい」
  • キーコンセプト
    • 「性能を追わない」
    • 「お母さんに嫌われない」
    • 「毎日何かが新しい」
  • 実現
    • 怖がられないワイヤレスリモコン
    • ファミコンよりも小さな筐体
    • 低電力の眠らないマシン
      • 面積18.9mmの極小CPU
      • 電力消費量9ワット/時間のWiiConnect24


何故なのかという点を議論し、キーコンセプトで方向性を切りだし、そして、どう実現するかという点でtry&errorを繰り返す。
描かれる風景は、「Why→What→how」と絵に描いたようなきれいなサイクルに見えた。
このサイクルに「とことんまで考える」というスタンスが補助線として引かれ、個々のフェーズがどれだけの深度で実現されているか、想起できるようになっている。

「私は、ゲーム作りそのものに、奥深さ、凄さみたいなものを感じるんです。ある1つのゲームを組み立てるということは、操作と遊びの構造を一体化させながら、何かのテーマ、コンセプトを貫いて延々と試行錯誤を繰り返すということ。膨大な可能性を追求して、究めるように収束させていく。そんな風に作れるものって、他にあまりないんじゃないかっと感じるんです。」

「1つのテーマについて、長くしつこく考え続けることが大切で、考え続けていることの蓄積の量が、ヒットを生んでいる部分というのもあるんだなと、私は思っています」
試作を積み重ね、時に捨て、また重ねる。ちゃぶ台返しとは、宮本の愚直に丁寧にソフトを作っていく姿勢を端的に映したもの。その精神は、結果として「ダメソフト」を排除し、世に質の高いソフトを送り続ける体制を築いたのである。

モチベーションの根幹

岩田社長のモチベーションの根幹が「喜んでもらいたい」という点にあると、しかもその起源が高校時代の友人という点が印象深かった。

岩田 人間はやっぱり、自分のやったことを褒めてくれたり喜んでくれたりする人がいないと木には登らないと思うんです。

この点、後段で示される、「うごメモ」で投稿を続けている小学生のメンタリティと、底で通じているのかなと思った。


「娯楽至上主義」のための物語

本自体は、任天堂の歴史を等間隔に俯瞰するというよりは、「ソフト体質」「娯楽至上主義」というコンセプトありきで物語が構築され、それを補強するための資料が積極的に採用されたという印象だった。
例えばDS・Wiiの物語を補強する横井という物語をクローズアップする一方、ファミコンについての記述はほんの触り程度しか紹介されていない、等。

余談

個人的には、マリオが当初「おっさん」と呼ばれていたというのがツボだった。